第四十一章 ■心強い応援■ |
コンサート二日目最初のステージは、午後一時。オールドサクラメントから歩いて5分ほどの所にある「メル&オージーズ アットセブンスアベニュー」 ボランティアがホテルに12時に迎えに来た。 今日は珍しく風が強い。ビルとビルの谷間にある会場は直接、陽が当たらず風が冷たく感じる。 日本からのバンド、「ディキシーサミット」の人気はたぶん口コミで広がったのだろう。今日は最初から会場は満杯だ。日系の方々も多く見える。 今日も英二郎のトロンボーン、楠堂浩己のドラム、馬鹿受けである。 新しい試みとしてベースの小林真人をフィーチャーして、「Big noise from wenettica」を披露した。ボブクロスビーボブキャッツバンドが演奏して有名になった曲だ。 英二郎、楠堂浩己に続いてこれが又馬鹿受け。 この「Big noise from wenettica」は本来ドラムとベース二人で演奏される曲だ。この曲のいわれは、ドラム、ベース以外のプレーヤーが、何かのアクシデントで遅刻した。しかしコンサートは始まってしう。仕方なくてドラムとベースふたりだけで、演奏したのが観客に受けてしまった。それ以来ボブクロスビーボブキャッツバンドのあたり曲として多くのレコードに演奏が残されている。 現地の人たちは、よくそのことを知っているらしくて、小林真人と楠堂浩己の演奏に大喜びをしたという訳だ。 ボブクロスビーボブキャッツバンドがやったとおりドラムの楠堂浩己がスティックでベースの弦をたたく。ベースの小林真人は右手を一切使わず、左手のみでメロディーを作る。これは二人の呼吸が合わなくては演奏が出来るものではない。日本式に言うならば二人羽織と言うことになるだろう。 観客も喜ぶが私たちミュージシャンも大喜びだ。これでステージの構成がうんと楽になった。 もう一人ピアノの後藤千香であるが、これが又、ピアノソロが大好評である。やはりサクラメントジュビリーの観客はスタンディングオーベーションで後藤千香のピアノのソロを讃えた。 実は70分という長丁場のステージでは、間に5分でもメンバーを休ませなくてはならない。そこで後藤千香にソロをやって貰ったのである。そんなことを知ってか、知らずか、観客は一人ステージ上に残った後藤千香に大きな大きな拍手を送る。予想して無くはなかったが、その拍手は正直言って予想以上だった。 ステージというのは全曲「ドッカンドッカン」ウケればよいと言うものではない。中には何曲か観客の興奮を沈めるレパートリーも必要である。 そう言う意味でと言ってはクラリネットの後藤雅広には失礼であるがその役目を担って貰った。しみじみとジョージルイスの演奏で有名な曲を日替わりメニューで演奏した。 後藤雅広の説得力のあるブルースの歌い方に観客は水を打ったように聞き入っていた。 特に彼の演奏する「バーガンディー・ストリートブルース」は絶品と言って良いだろう。私は同じバンドのメンバーとしてだけではなく、一人のリスナーとしても深い感銘を受けた。 もう一人と忘れてはならないのが向里直樹だ。彼は普段、ギターが専門である。しかし今回は無理を言ってバンジョーとギター両方を受け持って貰った。野球で言うスイッチヒッターである。ギターの腕はもちろんであるがバンジョーもなかなものである。 バンジョーというのはアメリカの生んだ数少ない楽器だ。バンジョー以外のほとんどの楽器がヨーロッパから持ち込まれている。アメリカ独特の楽器バンジョー。それだけにアメリカ人というのは、我々日本人には想像が付かないほどバンジョーという楽器が好きな様である。何しろバンジョーソロを演奏すると、観客の顔つきが変わるといっても良い。こちらで見ていると何か観客の顔がニコニコするの様に見える。 アメリカ民族(まあアメリカ民族というような言葉はないが)独自の楽器と言う誇りのようなものを感ずる。それを日本人がいともたやすく演奏してしまうものだから、つい微笑ましくなるのであろう。観客のニコニコ顔にはなんだかそんな謎が隠されているようだ。 演奏曲目はもちろん日本でおなじみの「世界は日の出を待っている」を演奏したが、日増しにレパートリーが増え「チャイナタウン」「カリフォルニア ヒアー アイ カム」この先まだ増えることだろう。 5月20日にサクラメントに到着して早くも9日目を迎えようとしている。 おおよそここまではアクシデントらしきアクシデントは、無いといっても良い。敢えていうならば、後藤千香の日焼け事件、向里直樹のミュージックブック忘れ事件、とてもアクシデントはいえないようなことばかりである。 ところが! コンサートが始まってから、2、3の事件が起きた。 |
▲Index |
← 前へ ・ 次へ→ |