第十一章
■渡米のための準備■

 過去、私の渡米の場合、全部観光ビザで入国している。しかし今回はワーキングビザが必要になってくる。アメリカという国は、メキシコ、プエルトリコ、その他東南アジアなどから多くの人が働くため、入国している。現地の人たちとの摩擦を避けるためにもワーキングビザというのは必要だ。
 そういう意味では今回初めて仕事としてアメリカに渡ることになったわけだ。アメリカ大使館では、それに伴う手続き、過去の犯罪歴、病気云々等なかなか厳しい審査が待っていた。面白いもので同行の家族全員ワーキングビザが必要になる。これといった問題もなく、ビザはとれた。

 今回なにが大変といっても、一つ一つが全部英語である。たとえばバンドのプロフィール、メンバーの紹介等々、すべて英語で書かなくてはならない。正直言って私の手に余ることだ。こと音楽のことならば、大概のことはやってしまう。悲しいかな私の英語力は食事をするくらいの会話なら何とかなるが、法律的に、また契約書のような正式な文書となると、手も足もでない。仕方なく旅行社の方に全部任せることにした。

 渡米のための準備といえば、ステージでバンドの紹介並びに曲目の紹介をこれまた英語でしなくてはならない。これはトランペットを含め大変な問題だ。
 考慮の末、日本のジャズボーカルで活躍しているドリー・ベーカーさんに英語のレッスンをお願いした。ドリーさんだったらいつもステージにたっているし、ステージ専門の言葉などもよく分かると思う。実際にレッスンのために自宅にお伺いすることになったが、そうは簡単に頭の中に入っていかない。悪戦苦闘の連続である。全部テープに録音して何回も聞くのであるが、若いときのようにはいかない。最終的には、正式なコメントは読み上げることにした。
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