第二十七章
■始めて英語で正式なコメント■

 プリコンサート(本コンサートは五月二十八日から)で第一の難関にさしかかった。私が司会を始め無くてはならない。もちろん英語である。今時英語が出来ないのは、恥ずかしいとしか言いようがないが。出来ないものは出来ないのだ。
 仕方なく、と言うか予定通りに、渡米する前に、在日中のジャズボーカリスト、ドリーベーカーさんに書いていただいたコメントを読むことにした。ここで私のたどたどしい英語が意外な効果を生んだ。

今回のコメントをここに書いておこう。

 Lady's & gentleman we came from Japan to play here I'm happy to be here to at Sacrament Jazz Jubilee We're going to play stander jazz number We hope well all enjoy our music for your listening pleasure We hope you like it!
「皆さん私たちは演奏をするために日本からここにやってきました。サクラメントジャズジュビリーに参加できることが大変ハッピーです。私たちはスタンダードジャズナンバーを演奏します。私たちの演奏する音楽を楽しんでください。気に入っていただけることを望みます」


 以上のようなことを私が読み上げた。どこがどう面白かったのか私には分からないが、すごい勢いで拍手をしてくれたのである。このコメントで、一挙に観客と一体化したといえる。次の曲は敢えて私の歌にした。もちろん歌詞は英語である。
 このたどたどしいコメントの後に歌った私の歌に、何かまた面白みを見いだしたのだろう。謙遜ではないがお世辞にも私の歌は、うまいとはいえない。しかし、私が歌い終わった後はまたも「ヤンヤの喝采」である。各自アドリブの後にスキャットをやってみた。
 たぶん日本人がこのようなことをやることが不思議なのだろう。大いに喜んで頂いた。

 これですっかり私たちのバンドは観客にとけ込んだといって良い。
 ここで観客には冷静になっていただく意味で、バラードを挟んだ。私も若い頃ならばきれいな音でより派手に吹こうなどという邪心もあったが、この年にもなると、その様な意欲も薄くなり、ただ感情を込めて吹くことに全精力を傾けるようになった。
「これが私の人生だ。私の生き様だ。飾りもしなければ隠すものもない。」そんな気持ちでスローバラードを吹いた。前2曲ほどのはやし立てる感じはなかったが、きめの細かい拍手が私の耳に届いた。ミュージシャン冥利にひたった一瞬だ。
 ステージの選曲に対しては、初日と言うこともあってまだ手探りである。しかしだんだん先が見えてきた。やはり日本のステージとは手応えも反応も大分違う。

それになんと言っても我が日本ディキシー界が誇るドラムの楠堂浩己がまだ登場していない。今日(日本時間5月23日、注.サクラメントは5月22日)まで日本で仕事をしているのだ。

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