第十七章
■訪米前の日本での活動■
 ディキシーサミットとしての日本での活動がいよいよ始まる。手始めに東京は銀座のジャズクラブ「スィングシティー」との出演交渉がまとまった。この「スィングシティー」とは今やジャズクラブでの老舗だ。出演者もAクラスばかりである。ディキシーランドジャズも最近ではモダンジャズなどに負けてはいない。胸を張って堂々としたものだ。

 日本において一昔前までのディキシーランドジャズはジャズの仲間に入れてもらえない雰囲気があった。コンサートなどに呼ばれても必ずオープニングにパレードのみで終わりである。やっとここにきてディキシーランドジャズもジャズの市民権を獲得したという感じがする。私は個人的にはモダンジャズもディキシーランドジャズもあまり区別をしないが、「スィングシティー」に出演ということで、新たにその意識を強く持っている。

 モダンジャズが良くてディキシーランドジャズがそうでないと言う理屈はない。ちゃんとスイングさえしていれば、モダンジャズもディキシーランドジャズも同じだという気持ちはもっている。

 次々とディキシーサミットとしての出演依頼が舞い込んでくる。そんな中、NHK-FMのジャズ番組「セッション99」に出演が決定した。この番組に顔が出せるようになれば、ディキシーサミットバンドも本格的活動ということになる。「さあ、サクラメントジャズジュビリーまで残り半年だ!」身の引き締まる思いだ。

 定期的にジャズクラブをこなし、それぞれのコンビネーションを計る。
ディキシーランドジャズと言う音楽がは、決まりが有ってないような物だ。メンバー七人、それぞれが音楽でディスカッションをするわけだ。同時にみんなで盛り上げたり、誰かが一人意見をいったり、デュエットだったりその微妙なタイミング、コンビネーションが一番問題だ。普段は別々のバンドで活躍しているメンバーは、月に数回のジャズクラブでライブをやりながら、それぞれの間を取っていく。しかしなんといってもベストオブジャパンの選りすぐったメンバーだ。絶妙なコンビネーション、あまりにも楽しくうっかり仕事ということを忘れてしまうほどだ。

 それぞれの楽器のフィーチャーリングも考えなくてはならない。
例えばバンジョーでは「世界は日の出を待っている」「ワシントン広場の夜は更けて」などの定番もある。ただこういう曲がアメリカで通用するのかしないのか。そのあたりの心配は残る。向里直樹にはシビアーなジャズギターのソロもやってもらうつもりだ。

 ステージ数と照らし合わせると、一人につき4、5曲のフイーチヤーリングは用意しておかなくてはならない。私の場合はワイルドビルデビソンから譲ってもらったコルネットを使い、バラードをやることにした。1ステージに一曲は歌とスキャットも用意しておこうと思っている。

 クラリネットの曲も定番といえばジョージルイスの曲などで有名な「オーバーザウェーブス」日本名は「波頭を越えて」。スローでは「バーガンディーストリートブルース」、クラリネットのフィチャーでは事欠かないようだ。特に後藤雅広のバーガンディーは天下一品だ。

 トロンボーン英二郎のソロは、曲目というよりは英二郎自身のパフォーマンス、ぶつけ本番で大丈夫である。

 ピアノソロは、ラグタイムで決まりだ。ピアノプレーヤの後藤千香はラグタイムのビデオを出しているぐらいだから心配なし。

 ベースソロというと少し難しくなるが、ベースプレーヤーの小林真人はスキャットをやりながらベースを弾いたり、スラッピング奏法といって、今でいうエレキベースのチョッパーに似て、弦をたたいて音を出したりのパフォーマンスがある。

 最後はなんといってもドラムだ。ドラムプレーヤーの楠堂浩己は、これこそ曲目は何でも良い。定番といえば「SING SING SING」「ドラムブギー」等もある。
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